20代の不安 vs 60代の不安

2025年の1月です。
私がいまだに紙の新聞(英語でいうところの physical Paper)を購読し続けていることはかなり前の こちらのコラム でお伝えしていましたが、この「紙新聞」で、毎年1月の成人の日に必ず掲載されているのを読むのを楽しみにしている広告があります。
サントリーの「新成人」広告と呼ばれるもので、約五十年前(正確には46年前)の1979年から毎回心に染みるメッセージを届けてくれています。
私以外にもファンの方は多いようで、ざっと検索しただけで、その読後感想などをブログに記している人がたくさんいます。
ここ とか ここ とか ここ とか ここ とか)

当初は、作家の山口瞳さんが新成人へのメッセージを綴り、それが開高健さんが受け継ぎ(←お二人とも私が勤めていた広告制作会社SUN-ADの大先輩です)、そしてその後 伊集院静さんへと引き継がれ、そして今年2025年からは脚本家の三谷幸喜さんが語り手を引き受けてくださいました。
Xのサントリー公式アカウントでも、その広告原稿を掲載しています。
https://x.com/suntory/status/1878713597154803767
(サントリーさん、このリンクを変更/削除しないでね)
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三谷さんのメッセージは、山口さん、開高さん、伊集院さんらとはまたひと味違うもので、軽やか かつ 読者(メインターゲットとはもちろん二十歳の新成人の人たち。だが、新成人である私も含めて)の胸にすっと刺さってくるものでした。

今の三谷さん(現60歳代)から、あの頃の三谷さん(当時20歳)へ伝える言葉」という主旨で書き始められた、新成人へのメッセージ。

(伝えたいのは)自分という人間が六十代になった現在でもびっくりするほど未完成だということ。

今の君が悩んでいることは……その後も何も解決しない。
つまり、二十歳の君が今抱えている悩み以上の問題には、君は遭遇することはない。

…といった主旨で展開が進む内容。
(実際の名文の内容は、私などがここに引用記載しては失礼なので、広告原稿の画像にて どうぞご確認ください)

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この「20代の時の不安は、60代になったとき不安とほとんど変わりない」というメッセージに、私は はっとさせられました。

私は、このメッセージを
年をとってくるといろいろ不安や悩みが増えてくるが、それは20代であれこれ不安・悩みを抱えていたことと何ら変わりがない
つまり、人間が悩みを抱えるのは、いくつになっても同じなのだ
つまり、そう深刻に考える必要はありゃしないのだ
……と、読み替えさせていただいたのです。

たまたま私が 三谷さんとほぼ同年齢であるせいもあるかもしれませんが、三谷さんが20代の人たちに向けて記した言葉が、60代の私の胸にぐいぐい届いてしまった、という形です。

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もちろん、高年齢(不本意ながら、今の私は世の中の基準において 中年ではなく 明らかに 高齢者 の部類に足を踏み入れてしまっています orz )  の人間には、二十歳くらいの若い時にはあり得なかった悩み・不安も多々あります。

たとえば昨2024年のうちで私にとって 最大の事件 として降りかかったのが、高年齢ゆえに生じた(と外科医に言われた)変形性足関節症」という問題でした。

普段の生活で歩いていて、右の足首がやけに痛いなと思っていて外科で診断してもらったら
足首の関節の軟骨が摩耗して無くなっています
何かの治療や手術をしても軟骨自体が元に戻ることはありません
もちろん、サプリメントなどで解決できるものでもありません(本当に効果のあるサプリ類や治療薬は存在しません)
……と宣告されてしまったものです。

60歳代の変形性足関節症

このレントゲン写真を見せられながら、人生に失望するような説明を滔々と受けてしまいました

この 2024年最大の事件をはじめ(その他にも そんなこと やあんなこと等で) 60歳代となる私は 近頃大いに悩んで いた というのが正直なところでした。

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しかし2025年1月13日(成人の日)の朝に、三谷さんのメッセージ広告を見て、目から鱗が落ちるかのように、その不安意識を吹き飛ばしてもらえた気がしました。

思い返せば、自分は昔から悩み続けていたじゃないか、と。

結局、人間は悩み続けて 不安と闘いながら生きていくしかないのだろう、と。

中学・高校時代から友人とロックバンドを組んで音楽活動をし始めていた私は、20代の頃「ロックをやっている人間は、皆、30歳を過ぎたら死んで、この世から姿を消す運命にある」と強く強く信じていたものでした。

その当時は、30歳代を過ぎてロックをやっているミュージシャンがあまり居なかったということが背景にあります。
ジミ・ヘンドリックスも、ドアーズのジム・モリソンも20代で既に亡くなっていました。

でも、私は30歳を過ぎても死にませんでした。(そもそも私は30歳になる以前からロックミュージシャンになっていなかったですが…)

ミック・ジャガーは80歳を過ぎてもまだ元気で健在です。
ジェフ・ベックさんや高橋幸宏さん、坂本龍一さんは一昨年に亡くなりましたが、皆さんとも70歳を超えていました。
私が根拠もなく妄信していた ロックミュージシャン30歳死亡説 は、まったくもって笑止千万なものであったわけです。

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人間の、人生の悩みにはこの “死亡説” よりは多少深刻なものもあるとは思います。
でも、三谷さんは
若気の至りの不安・悩みも、それなりに年齢を重ねた人間の不安・悩みも、本質的には全く違いはない
そうした不安にとらわれすぎること自体の方が、問題である
……と軽やかに諭してくださったような気がしています。

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ちなみに、この三谷さんの新成人広告は、私のかつての同僚で、今のSUN-ADを代表する看板コピーライターのひとりとして活躍されている 岩崎亜矢さん(別名:町田町子さんが手がけたお仕事であることを、Facebookの繋がりの中から知りました。
https://www.facebook.com/photo?fbid=9067054416707257&set=pcb.9067054563373909

「今日と未来が、いい日でありますように。」

素晴らしいメッセージを届けていただけて、ほんとうに感謝しています。ありがとう!