安定した政権はいい政権か

2026年2月。
戦後最短の「真冬の衆院解散総選挙」が終わり、テレビは「自民の歴史的圧勝」を大きく報じました。
市場もさほど大きくは動揺することなく、
海外メディアも「安定」と報じて各国の政治家が「サナエの戦略に学べ」と高評価していることを伝える。
かつてないほど強い政権の誕生。
ニュースで「巨大与党」なる言葉も頻繁に使われています。

実は私自身は、この状況にいささかの不安を感じています。

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高市早苗首相が今回仕掛けた解散の目的は「政治の安定」
発表された解散の“大義”は、「新しい連立への信任」。
(ただこの“大義”は、党利党略を覆い隠すものだとして批判が出ているのも事実です)その高市首相の“戦略”は大当たりをして、圧勝をもたらす結果となりました。

自民圧勝で政治の安定?

本当に日本地図が真っ赤になるくらいバラがつきました

議席は過半数を大きく超え、法案成立に不安はない。
衆院選前の状況に比べ、政権運営は大幅にスムーズになったことは間違いありません。

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では、その「政治の安定」は本当に国民のためになるのか。
ここが、私が気になった部分です。

世界銀行が公表している世界ガバナンス指標でも、政治的安定(Political Stability)は重要な評価軸のひとつです。

確かに、政権が頻繁に入れ替わる国より、政策が継続する国の方が企業も投資しやすい。
これは理屈として理解できます。

しかし私は、安定という言葉が「権力の固定」と同義になった瞬間に、何かがすり替わる気がしています。

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かつて「一強」と呼ばれた安倍晋三政権の時代。
2014年、憲法解釈を変更した 集団的自衛権の行使容認は国会での審議でなく「閣議決定」で方向性が示されました。

また翌2015年の安全保障関連法成立では、国会前で大規模な抗議が起きました。

2020年の布マスク配布、いわゆるアベノマスク政策も象徴的でした。
決定は迅速。しかし、国民の納得はどうだったか。
とくにアベノマスク案件はいまだに「令和の巨額無駄遣い」として批判の矢面に立っていることはみなさんご存知の通りです。

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一方、衆院選前の 少数与党だった局面では違う風景も見えました。

ガソリン暫定税率をめぐる議論や、「103万円の壁」の見直し。
これらは自民単独の成果ではありません。
国民民主党など野党との協議を経て進んだものです。

議席が拮抗していたからこそ、与党は耳を傾けざるを得なかった。
結果として、議論が可視化された。
そのとき私は、国会中継を見るのが少し面白く感じられました。
きちんとぶつかり合いが為されている」と思えたからです。

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議席が伯仲していれば、与党は単独で政策を押し通せなくなる。
合意形成や議論が要求される政治が生まれる。
多様な意見が政治プロセスに反映される。
それこそが、真の「政治の安定」なのではないか。

安定とは、政権運営がただスムーズな状況ではなく、異なる声がぶつかり合いながらも壊れない状態。
緊張感を内包した持続。
そんなことではないか、と私はイメージしています。

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私は、高市早苗首相の姿勢を全否定するつもりではありません。

高市首相の会見は、いつも丁寧で 国民に理解できるような言葉遣いで話をしていると感じています。
安倍晋三首相時代や菅義偉首相時代のような、
政策への批判に対して
そのご指摘はあたらない」とか
回答は控えさせていただく
その質問にはすでにお答えしたとおり
といった突き放した弁論はしていない、という印象です。
※安倍さんや菅さんの言葉の残念さについては 私は ここ や ここ  のコラムで書き記していました。

ただその言葉や姿勢の丁寧さとは別に
圧倒的多数を背景に政策が一気に進むとき、修正する力はどこにあるのか。
そこが私が気にしている部分です。

政治の安定とは、与党にとってのストレスの少なさではなく、国民にとっての安心であるべき。
そして安心とは、反対意見が存在しないことではなく、反対意見がきちんと議論されること。

圧勝は民意の結果です。しかしそれは白紙委任ではない。
むしろ強い政権を持った今こそ、国民の目は厳しくなるべきだと思うのです。

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繰り返しになりますが、私は、声がぶつけ合いながらも壊れない政治こそが、長い目で見た安定だと信じています。

圧勝のあとにこそ、民主主義の真価が問われる。
国民のひとりとして、静かに、しかし確かに、注視していきたい。
第二次高市内閣が発足したこのタイミングで、あえて書き記しておくことにします。