コアラの業務改善を考える

夏です。猛暑です。つい先日、群馬県桐生市とか、埼玉県熊谷市とか、岐阜県多治見市とかの “猛暑ブランド” の都市で最高気温40℃をマークした、といったニュースも報じられていましたが、なるほど暑いです。

さらにニュースを見ると、この暑さは日本だけでなく、ヨーロッパでも熱波襲来で、イギリス・スペインなどで軒並み40℃を超えているとのこと。

しかも、その熱波のせい(らしい)で、山火事がハンパでない規模で起きていて、すでに東京都の2倍の面積が焼失している、といった記事も出ていました。

日本で40℃を超えて、大変な山火事が起きたという話はついぞ聞かないので、ヨーロッパは日本より暑さに対する耐性が弱いのかもしれません。

これは、半分冗談でなく(半分は冗談です)、私がいっしょに仕事をしている美人フランス人ディレクターから聞いた話だと、フランスなどではそもそもエアコン普及率が2割くらいしかない(=エアコンで家を冷房する必要性がないため)とのことで、少なくともエアコン普及率が90%を超えている日本と比べて、国としての立ち位置が大きく異なっていることがわかります。(イギリスのエアコン普及率に至っては「3〜5%しかない」という情報もありました)

だから、同じ40℃の夏を迎えても、「国」が受けるダメージが違うのでしょう。(日本はそもそも湿度が違う、という大前提もあります

日本の森林が、なまじっかな猛暑では火事になったりしないド根性を備えた森林で、ほんとうによかったと思います!

と同時に、熱波で大火災・大災害に至ってしまっているヨーロッパの森林の一日も早い復旧・復興を願う次第です。

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この2022年はヨーロッパで山火事ですが、大変な山火事被害と聞いて想起されるのが、2019年から2020年にかけて発生し、起きていたオーストラリアの森林火災です。
240日以上燃え続けて2020年3月にようやく鎮火宣言が出されていましたが、実に深刻な大災害となっていました。

こちらの記事にもありますが、森に棲息していた動物たちが何千万匹、何億匹という規模で被害を受け、なかでもオーストラリアの観光大使ともいえるコアラの被害は、とても頻繁に報じられていました。

正真正銘のコアラ、山火事被害前

この「コアラ」です。中にチョコレートが詰まってマーチをする奴でも、かつて有ったインターネット接続会社でも、かつてテレビに出ていたお笑いコンビの片割れでもありません。

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鎮火して2年経った最近に、このコアラの火災被害と、その後のコアラの状況について特集したテレビ番組を見ました。(NHKのあの番組なんですけどね…)

番組では、「絶滅」が危惧されるほど危険な状態になっているコアラの現状と、それをなんとか保護(回復)させようと苦闘する人たちのドラマを描き出していました。
しかし、私はそこで、そうしたドラマの感動とは異なる、「コアラの人生設計の危うさ」が気になってしまいました。

きっかけは、上記の番組内でも「(他の生物に比して)特異なコアラの生態」として改めて紹介されていた、「コアラはユーカリしか食べない」という事実に関わることです。

そう。コアラは、ユーカリの葉しか食べません。
私は、ユーカリの実物を未だに見たことさえありませんが、コアラのこの超・偏食癖は、知識として(知識としてだけ)知っていました。

なぜ、コアラがこれしか食べないかというと、「他の生物はこれを食べなくて食べ物の取り合いにならないから」。
つまり、究極のブルーオーシャン戦略として、この超・偏食にいきついたという理由だとのことです。

ユーカリは栄養価も低い。しかも食物繊維が多くて消化もしにくい。さらに多くの動物に悪影響を及ぼす毒を有しているため、少なくとも哺乳類では、コアラ以外はこのユーカリを食べることはないそうです。

競合とのバッティングを避けて、完全なブルーオーシャンに辿り着いた点においては、コアラの戦略は、非常に巧妙なものだと思います。

ただ、次の2つの点において、コアラの生命存続マーケティングには、大きな【戦術の穴】がある。
それはもはや 致命的な欠陥 といってもよいくらいの穴である。
というのが、私が気づいたポイントです。
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一つ目の【穴】はただ、コアラにとってユーカリだけが唯一の存続手段であるという点。
食の多様性がまったくないため、ユーカリが入手不可能になったら、コアラの生活は持続不可能になります。
(しかもコアラは、ユーカリのなかでも =植物として600もの種類があるというユーカリの= 特定の2〜3種類のユーカリしか食べない、超・超・超・偏食とのこと)まさに、

今回の山火事などは、そのこのうえなく貴重なユーカリの供給が断たれる、典型的な脅威(Threat)です。
NHKの番組で紹介されていた、科学者やボランティアのみなさんの好意的なヘルプがなかったらまさに彼らは絶滅せざるを得ない運命ともなっていたでしょう。

二つ目の【穴】は、彼らは(他の哺乳類が一切食べない)ユーカリの毒性を体内で解毒消化するために【一日に20時間もの睡眠を必要としている】という奇異な生態です。
改めて思い出すに、地球上では、一日は 大体24時間 しかありません。
そのうちの20時間を寝て過ごす。
生命を持続するために、その20時間はなんとしても寝なければならない。
つまり、起きて生物活動を行えるのは、4時間しかない。
このうえなく、非効率、甚だしいところです。
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もしコアラが、このように…

愛くるしいコアラ像

…愛くるしい小動物でなかったら、多くの人が「てめえ、ふざけた生き方してるんじゃねーぞ」と憤慨するところではないでしょうか。

もしコアラが株式会社のような企業体だったら、その株を保有している株主は、即座に経営効率の改善を申し入れて、現経営陣の総入れ替えを申し入れるところでしょう。

一番目の脆弱性(食べるモノがユーカリしかない)も、
二番目の非効率性(生命維持のために一日の8割以上を寝て過ごしている)も、
すべては、食材のブルーオーシャン化を起点として生じている問題点です。

山火事になって、ユーカリが入手できなくなっても生きていけるようにする。
一日に活動できる時間を、少しでも効率よくするために、なんとかカイゼンする。
こうした問題解決のためには、「コアラ、お前、ユーカリ食うの、やめろ」という話にもならざるを得ないところです。
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…とここまでは、単にコアラという動物をdisっているだけの文脈ですが、一歩翻って、自分達の行動や振る舞いに「コアラ的なところ」がないかを検証してみると、どうでしょうか。

単一のビジネスモデルに寄りかかりすぎていないか。(単一もしくは少数の原料仕入先、あるいは仕事を貰う発注先に頼りすぎていて、その原料が途絶えたり、特定の発注先からの仕事が無くなったら企業活動が立ち行かないようなことになっていないか)
●第三者から見て、「超・効率が悪い仕事の仕方」を、仕方ないもの、当然のものと見て、カイゼンの途を途絶えさせていないか。(今やっている業務は、ほんとうにその時間を費やす価値があるのか)

コアラに対して、「お前、その生き方、考え直せよ」と思うココロは、すなわち、
自分に対して「お前、そのビジネスモデル、考え直せよ」と考える糸口にほかなりません。

実は、私はいま、自分の仕事のやり方について、この「コアラの教訓」がまさに当てはまっているなと反省をしているところです。

今回、ヨーロッパの山火事や、オーストラリアのコアラの惨状の報道に触れて、そんなことを考えてしまったものでした。

*以前のこちらのコラムで、NHKのアノ番組ネタを書いてしまいましたが、今回もまたこの番組をネタにしてしまいました。こういう「ひとつのものに寄りかかりすぎ」というコトこそがまさに「コアラの教訓」です (T_T)