昨年からのご縁で、この初夏にも新潟県長岡市の大学で、また非常勤講師のお仕事をさせていただいています。(前回の講義の様子については こちらのコラム にてお伝えしていました)
今回は、前回の講義以上に 実技演習 の比率を高め、広告のビジュアルを実際に写真撮影して作成した上で、コピーも入れて グラフィック作品(ポスター)を仕上げる、というプログラム内容となって、実制作を進める学生のみなさんに、コンセプトの組み立て方や、それを効果的に発信するための表現手法について、アドバイスをさせていただきました。


こんな感じで、学生さん達の作品講評などもしていました
長岡までは、東京駅から上越新幹線で1.5時間。
私の自宅から東京駅までやはり1時間強かかるので、大学の講義室に9時より前にちゃんと到着できるよう、講義のある日は相当に早起きして 新幹線通勤 をすることとなりました。
※昨年末の時は、1週間集中講義というスケジュールだったのでホテルを取って宿泊する出張滞在コースでしたが、今回は週イチで決まった曜日に講義があるということで、その曜日に現地へ通って、その日のうちに戻るという通勤スタイルとなりました。
「相当早起き」というのは、具体的には朝4時台起床。
身支度をして家を出て、地元駅から朝5時台の電車に乗って都心に向かうパターンでした。
それでやっと、東京駅へ7時前に到着することができます。
朝6時台というその時間帯に東京駅へ向かうJR山手線に乗っていて、ふと気がついたことがありました。
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その時間帯の、その電車内を見ていると、私が普段都内などへ仕事で向かうときに乗る「朝8時〜9時台の電車」の中の景色とちょっと違うな、と感じられたのです。
朝8時9時台には、スーツやジャケットなどを着た いわゆるオフィス勤めの人(かく言う私もそういう服装で乗車している)が多く見かけられるものです。
しかし、朝6時台の電車内ではそういうスタイルの人の比率より、カジュアルなトレーナーやジャンパーにカジュアルなパンツ(言ってしまうと作業着としてのズボン)で、スニーカーなどの動きやすい靴を履いたスタイルの人の比率が高いな、と感じられたのです。
さらにいってしまうと、そういうスタイルの 決して若者ではない人(もっと言ってしまうと“高齢者”の人) の比率が高いというのが率直な印象でした。
私は、自分でもそういった仕事分野の経験があるのですぐにピンッと気がつきましたが、その人たちはおそらく建築関係や警備関係などのお仕事で現場に向かっている人なのではないかと思われました。
そうした“現場”では得てして、朝早くから仕事が始まります。
しかも、日によって違う現場へ出向くこともしばしばあって、自分が住むエリアから離れた場所へ、その朝早めの時刻に間に合うように出かけなければならないこともよくあるものです。
かく言う私も、そういう時間に そういう服装格好で “現場”へ向かうべく電車に乗っていたものです。
その経験感覚からすると、私が平日の朝6時台のJR山手線の車内で見かけた人たちは、まずまちがいなく、そういう仕事に向かう人たち と断言することができます。
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私の実体験にあるのは 商業施設の駐車場の出入口で交通整理をする警備員です。
その業界は得てして、60歳を超えて、それまでの勤務会社で一定の雇用期間を(好むと好まざるに関わらず)終了することとなった(端的に言ってしまうと 定年 ですが(^_^; )そういう人ばかりが勤務している業界だったりします。
現に、「いま我が社には60歳より下の契約社員はいません」と明言する警備員会社もあったりします。
これは、一般的な労働市場のなかで見て、いささか偏りのある、いびつな状態のようにも思えます。
警備員業界は、なぜ就業年齢が高齢者に偏っているのか。
その答えは、たとえば、このページにも示されているような気がします。
警備の仕事の需要はとても高い。
でも、その仕事を希望する人が多くない。
若い人は、自分の可能性を他の分野で活かすことを考えることが多く、
結果として、「あえて警備の仕事を生業と考える」人は多くない。
(警備員の平均年収が、約300万円、という金額も少なからず影響している)一方、就業の選択肢が多くない高齢者は、年齢制限等が求められない
警備業界での就業を選択する率が高くなる。
業界も、人手不足を解消する目的から、高齢者を積極的に採用することとなる。
その結果が、「警備業界では60歳以上の就業者ばかりになる」という現象につながっている、と考えても間違いではないように思われます。
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そうした業界は、昭和の頃には「ブルーカラーな仕事」と称されていたものでもありました。
令和の今は、「エッセンシャルワーク」という呼び名に変わっているかもしれません。
エッセンシャルワーク(人びとが日常生活を送るために欠かせない仕事)とは、厳密には、医師・看護師とか、介護士、農業、小売・販売などの仕事を示すと定義されていますが、警備員や建築関連の仕事もエッセンシャルワークに他ならない、と私は強く思っています。
私の狭い解釈では、それは、リモートワークでは為し得ない仕事、とも解釈しています。
私は近年(コロナ禍があった時期から現在に至るまで)仕事のやり取りの多くを ChatWorkや Slackや GoogleChatで行って、顔を合わせてするミーティングの多くも Zoomや Meetや Microsoft Teamsで行う 【リモートワーク】でまかなっていました。
今回の、新潟・長岡造形大学の講義はさすがにリモートではなく、現地に足を運んで、学生さん達とリアルに会話をしてコトを進める仕事で、それはとても新鮮(というか、仕事の原点?)といった印象を感じたものですが、コロナ以降、仕事はリモートでも十分できる、というのが、【オフィスワーカー】の人たちの素直な感覚だったと思います。
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しかし、エッセンシャルワークは、とてもリモートなどではできない。
“現場”に行って、カラダを動かして相手の人と対峙しなければ成立しない仕事である、というのが本質的なところだと思います。
(お医者さんが「遠隔作業でオンライン診察をする」などといった事例を耳目にしたりもしますが、まだまだ主流なところではないでしょう)
介護士も、小売・販売の仕事も、その場所に居て、相手の人と対面でやりとりしないことにはとても成り立たない仕事かと思われます。
リモートワークなんて、まったくの論外であるわけですね。
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話を元に戻すと、朝5時〜6時台のJR山手線に乗っている「そういう服装スタイルのシニアな人々」は、すなわち、高齢なエッセンシャルワークの人たち ということが、今回気づいたことであるわけです。
いまや、日本全国の あらゆる職種・業界において人手不足が深刻な問題(その原因はこの国の人口構成の極端な少子高齢化)となっており、その問題のブレイクスルーは外国人人材の活用にある、というのが大きなトレンドとなっています。
(その大きなトレンドに乗って、積極的に活動してるのが、私も仕事で関与しているこのような会社だったりします)
しかし、そういった世のトレンドとはいまだ完全には噛み合っていない光景を、新潟での非常勤講師仕事に向かう、早朝のJR山手線の中で遭遇したというのは、これはまた かなり考えさせられることだな、と感じた次第です。
警備員の業界がなぜ定年退職者たちを中心とした雇用しかできないのか。
なぜもっと幅広い層の人たちが「この仕事を目指したい!」と思える構造にできていないのか。
それは「他に就職先の選択肢がない高齢者たち」しか雇えないような就業環境や待遇しか提供できていないからなのではないか。
さらにいえば、高齢者には、なぜ、もっと幅広い職業選択の自由がないのか。
(若者を求人する企業も、高齢者は門前払いにしているのは、明確な事実であろう)
エッセンシャルワークは「必要不可欠」な仕事のはずなのに、そこで働く人が生活していくのに十分満足を得られる報酬が得られるようになっていないのはなぜか。
必要なモノやコトには、しかるべき対価としての報酬が用意されるべきではないか。
そんな疑問の数々が、今回の気づきからぼろぼろと引き出されてきます。
(疑問を感じただけ で、そこへのソリューションは、なんら思いつけていないのですが…ね…)